「人が死ぬって、卒業みたいなもんかも知れないな」
人生のなかにおとずれる、卒業という名の節目。。なんどその門をくぐるかは、ひとそれぞれあろうけど、、、いちばん最後にむかえる“卒業”を切りとった、ひとつの映画。『
Watch with Me 〜卒業写真〜』
よくある派手な作品とか大味ではけっしてなく、丁寧に心情をフィルムのなかににじませた125分。
「死を描くことは生を描くこと。生を描くことは死を描くこと。ですから、大きな奇跡も起こらない。ファンタジー的な要素もないけれども、生と死をリアルに描いて、そのなかで感動を伝えることが出来ればというふうに思った」(瀬木直貴カントク)
ホスピス・緩和ケアにも触れられてるこちらの作品。残されたじかんに抗うことなく死をうけとめる、尊重する。看取る側も、看取られる側も。。
同級生がいる故郷・福岡県久留米市にもどり、余命半年をおぼろげだった思い出探しと、希望を胸に秘めながら生きる、元報道カメラマン・和馬に
津田寛治さん。撮影まえに7kgしぼったという彼の、ひしひしとした生への葛藤、苦しみ。
そんな夫を支える、妻・由紀子役には、
羽田美智子さんが。
そして、回想シーンとして主人公・和馬の青春時代がきざまれるわけですが、そこに映しだされるのは、
中野大地さんと
高木古都さんのフレッシュなふたりが演ずる、淡い恋ものがたり。。
そんな昭和のじだいと、現代を行ったり来たりする構成になってますが、、むかしの町並みや中学生の部屋に見える、じだい背景だったり空気感。そしてロケ地・久留米の美しい田園風景。
「まず町に出会って、そこに住まわれてるひとに出会って、はじめてそこのオリジナルのストーリーをつくっていく」とおっしゃった、瀬木カントク。
車やバイクは使わず、じぶんの足で隈なく歩いて、気にいったところを集めてくるのだそうですが、じっさいの地元のかたがたが多数出演されている、こちらの映画。。。地元のお披露目上映のときには、市民会館のキャパを超える来場者で、会館いらいの動員数を記録したのだとか。
ひとは死を目前に、どんな探しものをするのだろう、、?死をまじかに、ファインダーから見えていたものはなんだったのか??
悲しい涙をてらった作品ではなく、じぶんの目に映るひと。「家族や友人や恋人や、身近なところにいるひとたちの顔を思い浮かべて流れる、やさしいあたたかい涙というんでしょうか。そういうもので僕はあって欲しいと思っております」と、瀬木カントクからのメッセージを。
ラスト。。においまで伝わってきそうな、想いと込み上げてきた感情にまかせて、ただ泣いてしまったいまむら。
Watch with Me「私とともに目を覚まして祈りなさい」(新約聖書・マタイによる福音書)
近代ホスピスの創設者、シシリー・ソンダース女史はこの言葉にホスピスの基本精神を託して「死が近い人を見守る」という意味で使用した。